後列左から:炭田、楠山、西川、納村/前列左から:藤田(友)、高砂、藤田(武)、川元、櫻井?
出席者
■藤田 友里佳(1期生?地域再生学科?竹鼻圭子ゼミ)
■川元 美咲(1期生?地域再生学科?尾久土正己ゼミ、大学院博士前期課程修了?神田孝治ゼミ)
■高砂 有以(1期生?地域再生学科?藤田武弘ゼミ)
■櫻井 嵩士(2期生?観光経営学科?西村尚剛ゼミ)
■炭田 晃希(3期生?観光経営学科?竹林浩志ゼミ)
■楠山 愛弓(4期生?観光経営学科?竹田明弘ゼミ)
■西川 明希(4期生?地域再生学科?竹鼻圭子ゼミ)
■納村 悠希(5期生?地域再生学科?東悦子ゼミ)
司会
藤田 武弘(和歌山大学観光学部長)
日時
2016年10月22日(土)14:00~16:30
場所
和歌山大学観光学部棟1F 学部長室
記録
尾久土 正己(和歌山大学観光学部教授)、大浦 由美(和歌山大学観光学部教授)、
川島 拓(2回生?木川 剛志ゼミ)
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観光学部生の時代を振り返って
学部長: 今日は1期生から5期生まで、8名の卒業生に集まっていただきました。まずは自己紹介をお願いします。
藤田: 1期生の藤田友里佳です。学部では竹鼻ゼミに所属していました。現在、和歌山大学の国際観光学研究センターで、コーディネーター支援員をしています。学部の国際化に関わる仕事全般を担当しています。よろしくお願いします。
藤田友里佳(ふじた?ゆりか) 2011 年卒。
和歌山大学国際観光学研究センターにてコーディネーター支援員として勤務。
川元:1期生の川元美咲です。学部の時は尾久土ゼミで、大学院では神田ゼミに所属していました。出身は鹿児島県の奄美大島です。龍郷町役場の教育委員会に所属し、学芸員として働いています。今の業務内容としては、地元の文化財の保存?管理や展示室の企画、天然記念物の滅失管理、あと社会教育全般のお仕事をしています。よろしくお願いします。
川元美咲(かわもと?みさき) 2011 年卒。
鹿児島県奄美大島龍郷町役場?教育委員会にて学芸員として勤務。
高砂:1期生の高砂有以です。藤田ゼミに所属していました。今は地元の和歌山県岩出市役所に勤めておりまして、2年前から産業振興課で観光振興に関わる事務を担当しています。昨年は観光学部生とのLIP(地域インターンシップ)も担当しました。よろしくお願いします。
櫻井:2期生の櫻井嵩士です。今はJR 西日本の京橋車掌区で勤務しています。電車のドアの開け閉めや案内放送など、多くの方がイメージされる通りの「車掌」としての仕事の他、新任車掌の補完教育や大阪支社内のCS?サービス協議会の企画?運営などを行っています。よろしくお願いします。
炭田:3期生の炭田晃希です。竹林浩志ゼミに所属していました。今は、北海道の摩周湖がある弟子屈町で地域おこし協力隊をしています。現在の業務内容は、一昨年に閉校になってしまった小学校をベースにしながら、地域の自立を目指した協議会の事務局をしています。その他、イベントのお手伝いなど、町の活性化に関連する様々なことをやっています。普段、スーツを着ないので緊張しています(笑)。よろしくお願いします。
楠山:4期生の楠山愛弓と申します。竹田ゼミに所属しておりました。現在は紀陽銀行の熊取支店で、リテール担当として個人のお客様の資産形成のお手伝いをさせていただいております。よろしくお願いいたします。
西川:4期生の西川明希と申します。和歌山市出身です。竹鼻ゼミに所属しておりました。現在は全日本空輸株式会社に務めておりまして、羽田空港をベースに、国内線?国際線に乗務しております。来月からビジネス資格の訓練に入るところです。よろしくお願いいたします。
納村:5期生の納村悠希です。出身は名古屋です。東ゼミでした。会社は星野リゾートで、10月入社を選んだので、今ちょうど2年目が始まったばかりです。1年目に「星のや軽井沢」でOJT、2年目に「リゾナーレ熱海」に本配属されました。現在はアクティビティユニットで働いていますが、マルチタスクなので、1日4か所ぐらい移動します。朝はクライミングウォール、その後、客室清掃に入って、森でツリーハウス、カフェの運営や接客もやっています。よろしくお願いします。
学部長:はい、よろしくお願いします。それでは、まずは皆さんに観光学部生時代を振り返っていただこうと思います。1期生の皆さん、いかがですか?
高砂:1期生で「何が始まるのかな?」みたいなところもあって、2期生以降と違って人数も少なくて、その分、団結力はあったかなと思います。他学部に比べて、先生と学部生との距離もかなり近かったんじゃないかなと。他大学の卒業生に聞いても、そんなに先生方と関わっていたりとか、学部生同士、全員知っているみたいな学部ってなかったみたいで、そこはすごく濃厚だったなと思っています。
高砂有以(たかす?ゆい) 2011 年卒。
和歌山県岩出市役所にて産業振興課?商工観光係として勤務。
学部長:1期生の定員、70人だったんですよ。今は、120人まで増えています。学生の人数が少ない中で、我々も手探りでしたが、その分、学生としっかり付き合えるだけの時間はありましたね。他の1期生はいかがですか?
川元:はい、私もそれが一番ですね。先生方との距離がすごく近かったので、いっぱい相談にのってもらいましたし、尾久土先生とはシベリアに皆既日食を見に行ったり、藤田先生、神田先生とも色んなフィールドワークに行きました。今振り返ると、「すごく贅沢な時間を過ごしていたんだな」って思います。
藤田:1期生は行動派ばっかりで、みんなじっとしてなくて、なんかしてないと自分も置いてかれそうな気がして、いつも焦ってました。
学部長:1期生だけでなく、観光学部に来る学生はみんな、すごくアクティビティが高いというか。
藤田:2期生も3期生も個性的で「濃かった」ですけど、1期生はずば抜けて「濃かった」気がしています。
櫻井:先輩方がそうやって手探りで1年間過ごしてきていただいた分、2期生の時は、例えば新しく「応用演習」ができて、2年生でもゼミ的な活動をするようになったり、みんなで専門的なことを学べる一体感がずっとあるまま卒業できたかなと思っています。
学部長:2期生にとって、この木造の学舎には愛着あるのかな。卒業証書はここでもらったでしょ?
櫻井:「やっと出来た」っていうのが卒業する年の10月くらいで、感動と同時にあまり馴染みのないまま卒業してしまったという寂しさもありました。「あぁ、後輩うらやましいな、こんなきれいなところで勉強できて……」という感想を持っていたのをよく覚えています(笑)。
櫻井嵩士(さくらい?たかし) 2012 年卒。
西日本旅客鉄道(株)?近畿統括本部大阪支社?京橋車掌区において車掌として勤務。
学部長:なるほどね。以上、学部創設期の先輩方のお話でしたけど、3期生はいかがですか。
炭田:僕ら3期生も日本文化科目が全て必修だったので、共同作業が多くありました。本当にみんながモチベーション高くて、「ついて行かなきゃ」と思っていたのが印象に残っていますね。
楠山:校舎でいえば、西側にテラスありますよね?そこで休み時間に、先生に次に行く旅行の相談に乗ってもらった思い出があります。「とりあえずバックパッカーする」みたいな同級生が多くて、すごく行動的だったなぁと思います。
納村:私もやっぱり何より印象に残っているのが、先輩が濃いなっていう(笑)。本当に入学した時から先輩の圧がすごい、あの先輩もこの先輩もすごい、みたいな。お手本があるというか、こうなりたいなって思える先輩がいっぱいいて、積極的に声を掛けに行きました。
西川:私の兄が1期生で「毎日すごく楽しい。まだ何も型にはまっていない分、先生も自分たちの話を聞いてくださるから、すごくいいよ」と言っていて、その姿を見て入学しようと思いました。やはり観光学部の先生って、すごく学生との距離を縮めようとしてくださっていて、それはよかったなと思います。自分の子供にも入って欲しいなと(笑)。
学部長:1期から5期まで、5年離れていても、やっぱり観光学部の雰囲気っていうのは脈々と受け継がれているのかもしれませんね。それと、手探りだったのは皆さんだけじゃなくて、実は教員も一緒。授業の仕組みを作っていくのも本当に試行錯誤でした。それが今、色んな意味で花開いてきたと思います。そういう意味では、卒業生は観光学部を作っていった「同志」だと思っています。
観光学部の魅力
学部長:さて、次は皆さんが観光学部で学んだことで、今の自分たちの仕事や生活に影響を与えていたり、活かされていたりするところがあれば、教えてもらいましょうか。どなたからでも結構です。
櫻井:今ちょうど職場(JR西日本)で問題になっているのが、インバウンドのお客様にいかに対応するか。会社としての対応は遅れ気味で、例えば日根野駅でお客様の乗り間違えがとても多いことが新聞等でも問題になりました。外国人利用者の価値観や行動について理解しようとする人が現場にあまりいないなかで、青木義英先生の講義でインバウンドについて色々学んだことが役に立っています。顧客満足に関する月例会議などで具体的に提案したり、自分の学んだ知識を活かせる分野を見つけられました。ただ、まだまだ勉強が足りてなかったと思うので、それを今、もう1回観光学部に入って勉強し直したいなぁとも思います。
炭田:去年から地域おこし協力隊になり、地域の方々と接する中で、「地域資源」という、観光学部でよく使っていた言葉を、酪農家さんなど地元の方々にうまく伝えられず、役場や事務局の思いを押し付けているような気がしていました。そこで、「地域に人が集まる雰囲気」を疑似体験してもらおうと、竹林(浩)先生に相談して、学生に来てもらいました。 4泊5日の行程で、地域の空いている教員住宅を拠点に、地域の方と交流をしたり、学生だけで地域内を自転車で回ってもらいました。孫みたいな世代の学生たちが、「この地域ってすごく良いところですね」「初めて動いている牛を見ました」というと、地元の方もどんどん心を開いてくれて、「こういうものが地域の資源なんだ」と理解してもらいました。自分自身も大学時代に様々な場所に行きましたが、今度は依頼する側に回ったというのがとても感慨深かったです。
炭田晃希(すみた?こうき) 2013 年卒。
北海道川上郡弟子屈町にて地域おこし協力隊として活動。
学部長:いや、嬉しいですよね。 住んでいる人の当たり前に、外から訪れてやって来る人たちの目線が加わることによって、違ったものがそこから浮かび上がってくるということは、観光学で我々が皆さんに伝えたかったことのひとつですが、その学びが今の活動にも活きていますね。
学部長:他にも役場関係の方が二人おられますけど、高砂さん、川元さんどうですか?
高砂:私も昨年度にLIPを依頼する側になりました。そこで分かったのは、観光学部に対する地元の期待がすごく大きくて、その分、求められる水準がすごく高いということです。ちょっとした失敗というか、他大学の学生さんに来てもらったら、十分にやってもらえたという成果でも、和大の観光学部だと「こんなもんか」と思われてしまうという怖さをすごく感じました。ただ、そうやって学生さんと一緒に活動してみて、やっぱり学生時代に藤田ゼミの活動を通じて様々な地域に接してきた経験はすごく大事だったと思います。現在担当している地域はこれまであまり観光に縁のなかったところで、盛り上げるのに苦労していますが、学部時代から「地域にいたらわからんことが、外から見たら資源になる」って話をいっぱい聞いてきて、自分も色んな地域に行って、それを体験してきたからこそ、 「外の人を入れて、外の人の話聞いてみようよ」って地域の人には伝え続けています。「意外と初めは嫌やったけど、やってみたら…学生ともやってみたら、結構いいんじゃない、観光って」って地域が思ってくれたらいいなと思いながら……毎日悩んでいます。
学部長:観光学部には、自分一人が専門家として何かしようというだけでなく、学生と一緒に地域と付き合おうとか、場合によっては卒業生も巻き込もうとか、 そういう思いで動いてくれる教員が割と多いと思います。だからそれぞれのところで活躍している卒業生が、こんな風に大学や後輩達を「使って」くれるのも嬉しいことですよね。
川元:私の場合は観光学部での学びが仕事に直結しています。観光学って幅広い勉強をしますよね?デザイン、歴史?文化、そして実践的なところまで。そうして地元に戻ってきたら、勉強したことを活かしたいと思う場面がたくさんあって、それのどこから手を付けるべきか、気持ちばかり焦っています。奄美は国立公園の指定が決まり、観光客も増えてきています。しかし、まだ観光客を受け入れる仕組みが不十分だといえます。和歌山大学で勉強してきましたが、実践はなかなか難しく、もっと勉強しておけばよかったと思います。ただ、なにか問題があった時に、どの分野の先生に相談すればいいかとか、どの本を読めばいいかっていうのをわかっているので、その点がすごく自分にと って財産になっています。
学部長:確かに大学で得られるものとしては、自分自身の知識だけじゃなくて、そういうネットワークも重要ですよね。
川元:そうですね。人を知り、人とつながることが仕事の上で一番の糧になると思います。
学部長:さて、今度は民間企業から地域に関わっておられるお二方どうですか?
楠山:今までの皆様のお話と変わってくるかもしれないのですが、私が紀陽銀行で担当しているのが個人のお客様の資産形成で、どちらかというと経済の知識が必要になっています。でも今後、企業への融資などの担当になる可能性もあって、そこで和歌山の地方銀行として、和歌山の企業と、例えば大阪や奈良の企業を結びつけるという役目を果たす際には、竹林浩志先生のリーダーシップ論とか、竹田先生のホスピタリティ?マネジメントで学んだ経営理念の大切さなどを活かせると思います。地域の活性化っていうのは地方銀行が担わんといかんのかなって思ってるので。
楠山愛弓(くすやま?あゆみ) 2014 年卒。
(株)紀陽銀行?熊取支店においてリテール担当として勤務。
学部長:私企業だけじゃなくて、地域経営っていう大きい視点で見た時に必要な経済学とか経営学、そこをもっと学部のプログラムとしても取り込んでいきたい し、皆さんが実際に社会に出た時にすごく役に立つようなことを提供できればいいなと思っているので、是非、観光学部にこんなカリキュラムを作った方がどうですかっていうことを聞かせてもらったらいいかなと思うんですけれども。
納村:星野リゾートでは「ご当地学」というのを会社でやっていたりしていて、地域の魅力をお客様に発信したりするので、その分では、学部時代の学びがすごく役に立っています。また、さっきインバウンドの話がありましたけど、本当に今は海外のお客様が増えていて、英語で話しかけられたり、中国語で話しかけられたりするのが日常的な現場にいるので、加藤先生や東先生の英語の授業やそこでの英語での発表の経験がすごく役に立ったと感じています。それに海外留学もしました。やっぱり大学で英語を頑張らなかったら、今の自分はなかったと思います。
納村悠希(おさむら?ゆき) 2015 年卒。
(株)星野リゾート?リゾナーレ熱海にてアクティビティユニット担当にて勤務。
学部長:これからは「和歌山にいると世界とつながれる」という学部を作っていきたいと思っています。すでに世界の観光学をリードする先生方が来て講義もされています。世界中の人が、和歌山に来たら、サリー大学ともつながる、クイーンズランド大学ともつながる、そういう環境を実現したいなと思ってるんです。是非、社会人入学お待ちしております。
櫻井:本当に語学は大事だと思います。
学部長:車掌の業務でもそう感じる?
櫻井:そうですね。中国語しかしゃべれないお客様もお越しいただいたりするので、「わからない」って諦めるのは簡単なんですけれど、それでも「頑張って対応 するぞ!」って気持ちでお客様に接しています。そういう意味では、海外の人との付き合いに慣れるっていう面でも、大学生活はとても有意義だったかなと思います。
学部長:なるほど。西川さんはどうですか?
西川:そうですね、今の櫻井さんのお話にすごく共感できます。今、中国の方が本当に多くて、HOT/COLDさえも通じない場面があります。じゃあどうやってコミュニケーションとればいいんだってなったら、やっぱりこちらが中国語を話す、あるいはボディランゲージで何とかお伝えするっていうことしかできないんですけれど、でも私の場合は、そういう海外の方と接する際の、きっと基本的なコミュニケーションの仕方を観光学部で学んでいたので、そういったところで苦労はなかったですね。
西川明希(にしかわ?あき) 2014 年卒。
(株)全日本空輸において客室乗務員として勤務。
学部長:基本的なコミュニケーションの仕方っていうのは、「物怖じしない」っていうことかな?
西川:そうですね。外国の方だけでなく、例えばVIPのお客様に対応することもあるんですけれども、そういう方の前でもひるまずに、お話したい、何とか会話を引き出したいと前に出ています。たぶんLIPの活動で地域の方と接したりする経験の中から、コミュニケーション力が培われたのではないかなと思います。
学部長:なるほどね。さて、国際観光学研究センターで多くの留学生や留学志望の学生に対応している藤田さんはどうですか?
藤田:私も地域でたくさん学ばせてもらう機会があったのに加えて、東先生や竹鼻先生など、グローバルな視点を持っている先生がいて、「グローカル」という言葉をそこで身に着けたと思います。それで地域だけでなく世界を見ようと思って、修士は海外に飛び出しました。
学部長:今、藤田さんは学部生に学びを提供する側に回っているわけですよね。そういう立場から見て観光学部での学びをどう思いますか。
藤田武弘(ふじた?たけひろ)
2015年より和歌山大学観光学部長および国際観光学研究センター長。
藤田:今の学部生を見ていて思うのが、「私は国際が好きです」「私は地域が好きです」って分裂してないんです。だからどっちもやるんですよ。「地域もやりたいし、外国にも行って英語ペラペラになりたいし、どうしたらいいですか?」っていう相談が多いです。それはきっと1期生から続いていて、何でも挑戦する学生は本当に何でもやろうとする。なんか微笑ましいです(笑)。
学部長:やっぱりすごいな、観光学部の学生は、って思うのはまさにそこの点。ローカルとグローバルを別々にあるいは対立的に捉えるのではなくて、地域で学んだことの積み上げが世界にも通じるという見方をしている「グローカル」な学生が着々と育っているというのは素晴らしいことだなと思います。さて、少し視点を変えて……観光学部には、他学部に比べて地元や関西圏以外から来る学生が多くて、しかもその学生達がまた色んな場所に出かけていって、その経験を共有できる環境というような、日々「異文化交流」みたいなところがあるんですが、そんなことを皆さん感じたことありませんか?
高砂:私、自分の大学の友人のなかに和歌山出身者がほぼいないですね。それで、和大にいてるのに、和歌山弁を話すと珍しがられていました(笑)。私は一度も和歌山を離れて生活したことがないので、那智勝浦に遊びに行って海をみてテンション上がっている友人を見て「そんなに和歌山おもしろい?そんなにすごい の?和歌山って。」みたいな(笑)。この間来ていただいたLIPの学生さんも和歌山出身者が1人もいなかったのですごく面白かったです。自分の地域を他の人から見てもらえるっていう体験ができたのはよかったです。それと、観光学部には自分の地元を活性化させたいと思って大学に来た人が多くて、今も、地元に戻って頑張っている友人がたくさんいます。 それに学生時代にお世話になった地域の人ともつながっていて、おじいちゃん、おばあちゃんがたくさん色んなところにいるような感覚もあります。「そっちではそういうのが流行ってるんやね、和歌山でもじゃあやってみようか」とか、「和歌山ってこういうことやってないから、やってみたらいいんじゃない」とかっていう情報交換が、色んな地域の人とできるっていうのはすごいと思いますね。
納村:私は名古屋出身ですが、和歌山大好きになりました。でも、全国に同志ができた感じです。働いてからも会いに行ったりしています。
学部長:卒業生が全国のあちこちで活躍しているのは本当に嬉しいことですね。……ちょっと話は変わりますが、大学生活って、観光学部以外でも色々な経験があったのかなと思うんだけど?
櫻井:そうですね。最初、観光学部生として楽しいことをしつつ、でも、「なんか自分の趣味とは合わへんな」っていうところもありました。 その時に「クリエ」の存在を知り、「そこで映像の制作プロジェクトをしている人がいて、ちょうど今はテレビ番組を作ってるよ」っていうのを尾久土先生に紹介されて入りました。それからは実際にテレビカメラを持ってあちこちに取材に行くようになりました。和歌山の高校生たちの活動を追いかけるドキュメンタリー番組なんかをチームで作っていくっていうのが結構楽しかったですね。そのなかで「あ、なんや、観光学部のチームで色々こんな ことしてみたらいいんやん」って思って、観光学部の学生たちとも仲良くできるようになったっていうことがありました。やっぱり、1学年120人いると、「観光学部ってあんまり楽しくないな」って思う人も正直いると思うんです。でも、学部だけにとらわれずに周りを見れば、和歌山大学として色んなことをやっているので、その中に入ってもう一度自分の学部を見つめ直 してみるっていうのも、有りかもしれないです。色々参加してみるのは絶対にいいことだと思います。
学部長:他の方はどうでしたか?
炭田:学生自治会をやっていて、他学部の先輩が出来たのはよかったです。そこで教わったことが今でも活きています。他にも体育会や文化部連合会と新入生歓迎実行委員会を組織し、入学式後の部活動紹介の進行を行いました。とても大変なこともありましたけれど、良い経験になりました。
学部長:もしかしてその経験が、色んな利害関係者、ステークホルダーの意見をちゃんと聞いて、立ち回らなあかんっていう今の地域おこし協力隊という立場には非常に活かされてるんじゃない?
炭田:意識してなかったですが、今、言われてみたらそうかなと思いました(笑)
学部長:高砂さんは大祭(大学祭)の実行委員やってたよね?
高砂:やっていましたね。大祭実行委員会も、他の学部の人と関わる機会があったのはとても良かったなと 思っています。それに、イベント募集したり、広報の記事もらったり、協賛もらったり、テントを組み立てたりという、大祭でやっていたことが、実は今、商工観光係としての仕事になっています。自治体がやる夏祭りで、テントを組み立てられる女子が来たっていう ので、「君は大学で何をしていたんだ」って言われるんですけど(笑)。大祭の活動での経験は今もかなり役に立っていますね。
観光学部?学生への期待
学部長:なるほどね。学部の勉強もそうだし、色んな課外活動もそうだし、皆さんにとってみれば非常に深い経験をされたということだと思います。さてその経験から、10周年を迎える観光学部に対して、そして後輩の学生たちに対して、アドバイスいただけますか? どなたからでもいいですよ。
納村:チャンスがたくさんある学部だから、それを是非活かしてほしいなと思います。LIPだったりGIPだっ たり、国内外問わず本当に色んなプロジェクトがあるので。そして、やっぱり何人かで一緒に協力して、何かを作り上げるっていう過程を経験出来るのが大学時代で、それが一番社会に活きるんじゃないかなと思うんです。ああでもない、こうでもないってみんなで討議していった結果、いいものを作り上げていくっていうことはあらゆる仕事に共通していて、だからこそ一 番社会で活かせる力だと思います。そしてそれを育めるのがそういう場に参加することだと思うんです。だ から、とりあえず目に入ったもの、興味があるものに チャレンジしてほしいと思います。
学部長:納村さん自身、4年間そうやって過ごしてきた?
納村:もう、とりあえずやれるもの何でもやってきました。後悔が無いって言いきれる大学生活を送れたので、本当に楽しかったです。
西川:10周年を迎えて、卒業生がたくさん出てきて、Facebookなどを見ても、世界?全国で活躍している先輩方がたくさんいます。ですから、もっと先輩を使ってやるぞっていう気持ちを持って、いっぱい頼ってきていただいて、色んな経験をしていただけたらいいな って思います。その一言です。
楠山:言うまでもないかもしれないですけど、授業をきっちり受けること。私も、今から戻れるなら、もう1回初めからちゃんと聞きたいです。とても大事なことを教えてもらっていたんだって、後から気付くことがすごく多かったんです。聞いといたら絶対に役に立ちます。無駄な授業はないです。
学部長:今だからわかる。
楠山:はい(笑)
炭田:実は観光学部を志望していたわけではありません。また卒業後、一度は製造業に就職しました。しか し、今、観光やまちづくりに携わる仕事をしていることは不思議な縁を感じます。偶然フィールドワークに行った弟子屈がとても気に入り、今暮らしているので、本当に何が起こるかわからないです。やる気のある人を横目に、「あ、俺やばい」と思いながらも一歩引いた目線でいることも、それはそれでありだな、と思いま した。
学部長:「流れに乗るのもあり」っていうこと?
炭田:はい、そういうことです。
学部長:流されても後悔はしないかもしれんね、観光学部はね(笑)。
櫻井:僕もどちらかというと、やる気のある先輩方に押されて、引き気味に大学生活送ったなって側の人間なので、すごく共感できました。卒業生の多くは、今は直接観光に関わっていないと思うんです。それでも、やっぱり大学生で勉強してきたことを使ってでしか、自分が活躍できない場って絶対あるはずです。観光学部での学びや活動自体が、どこの会社や組織に入って も必要な問題や課題を見つける力と、誰にでも物怖じせずに「これをやりたいです」と言える実力を養ってくれていると、僕は卒業してから実感しました。積極的にいくもよし、消極的にいくもよし、ちょっとでも多く色々なことを吸収してほしいなと思います。
学部長:心強いメッセージありがとう。じゃあ、1期生いかがですか。
高砂:仕事として観光に携わるなかで、何か問題が起きた時に、「ちょっと観光学部の学部長に電話します」とかできる関係性ができたことはすごい財産です。それに先生だけじゃなくて、「じゃあ和歌山県東京事務所 にいてる同期に電話します」とか、そういう人脈がたくさんできたというのは、たぶん観光学部だったからこそだと思っています。こういう刺激を与えてくれる友人とか先生方との人脈をたくさん作って大事にして欲しいです。先輩?後輩ともすぐつながれる関係が、 観光学部にはあるんじゃないかと思っています。
学部長:我々にとっても非常に嬉しいことです。例えば毎年の卒業式には同窓会長で1期生の西川君を始め、同期の水島君なども顔を出してくれています。働き盛 りの人たちが、同窓会の行事にわざわざ集まって来るというのは、実はすごく負担なことじゃないかって思うけれど、こうやって先輩たちが集まってきてくれて、 後輩たちをつないでくれるのは本当にありがたいです。
川元:今、改めて観光学部のカリキュラムをみると、観光の理論と実践がバランスよく組み合わさっていて、非常にいい大学だなぁって思うんです。なので、是非早い段階でその恵まれた環境に気付いて、一生懸命頑張っていただきたいなと思っています。
藤田:今、グローバル?プログラムを志望している1回生の面談をやっているんですけど、「今はこれをやり たいから、やるべきことを全部手がけています」っていう学生もいれば、「やっぱり何をやりたいのかまだわからないです」っていう学生もいます。後者のような学生をみていると、「私が学部生に戻ってあなたの分をやりたい!」って思うくらい、今は学部での学びの内容が充実していると思うので、全部吸収してほしいなって本当に思います。でもその一方で「もっと失敗し ていいんだよ」って言ってあげたいとも思うんです。専門科目を全て英語で学ぶグローバル?プログラムにすごいプレッシャーを感じるのはよくわかるのですが、 「それが出来るかわからないから本登録は控えます」 っていう学生がいるんです。こんなこと言ったら怒られるかもしれないですけど、心の中では「出来なくてもいいやん」って思っちゃう。「失敗してもいいから、1回手出してみ」って。失敗して怒られないのは今だし、 失敗して学べるのも今。たぶん失敗しているうちに、「これは向いてない」「これは向いている」っていうの がわかる。そうして「私はこういう人間です」という自信を持って大学を卒業してほしいなって思います。
学部長:ありがとうございます。卒業生の言葉に感動しました。今こそ、卒業してからこそ、ひょっとしたら、先生方とか、あるいは先輩方とのネットワークが活かせたりするような機会がたくさんあるかもしれませんね。卒業生が頼ってくれる学部であるっていうこ とは、やっぱり教員にとってみれば誇りでもあるし、自分たちのやったことの、評価の裏返しでもあるので、非常に嬉しいです。そういう学部であり続けたいですね。
これからの人生設計?夢
学部長:では、最後の皆さんへのミッションです。これからの皆さんの人生設計、抱負や夢を語っていただきたいと思います。どなたからでもどうぞ。
藤田:大学で働いて4年目ですが、社会に出る前の学生に対して、私が何かをしたことで少しでも影響与えられるという仕事が日々楽しくて、将来的にも高等教育機関に関わる仕事をしたいと思っています。色んな学生と関わって、すごく刺激をもらって、でも刺激を もらいすぎて、私もまた海外に行きたいなっていう気持ちもどんどん大きくなってきて、その辺のところですごい迷いがあるんですけど(笑)。自分が学ぶのも好きですし、学生とコミュニケーションとるのも大好きだから、そういうことを活かせるような仕事をって思うと、やっぱり大学という組織がすごく魅力的です。大学に関われて、かつ国際的で、将来的には3か国語くらいは軽く喋れるような人間になりたいので、日々勉強していかなきゃなと。学生に勉強しろという分、私も勉強しなきゃなと思っています。
川元:今、龍郷町の学芸員として、歴史や文化を勉強中です。奄美大島って日本史とは全然違う歴史を経ています。琉球王朝や薩摩藩、そしてアメリカに統治されていた時代……。まず私自身が知識を身につけ、あとは子どもから大人まで、それから観光客にも、地元の歴史?文化、自然をわかりやすく伝えられる人材になりたいです。そういった基礎知識をしっかり積んでから、いつか観光を企画する仕事が出来ればなと思っています。
高砂:やはり行政職なので、いつどこでどういう分野の仕事に携わることになるかわからないのですが、観光に限らず、どの分野においても行政は地域と密接に関わっていくところだと思います。なので「和大観光学部を卒業しました」って言っても恥ずかしくないような人になれたらいいなと思っています。日々反省しつつ、自分が大学時代に思い描いていたような行政マ ンになれるように頑張ります。
櫻井:当社(JR西日本)は、会社全体の施策に関わる総合職と鉄道運行の最前線で会社人生を終えるプロフ ェッショナル職と2つあって、完全に採用系統が分かれた状態になっています。まるで親会社と子会社のような関係に見えていて、私は後者の人間です。鉄道が好きでJRに応募したので、採用形態に納得した上で入社したんですが、働いていく中で、自分が勉強してきたことを活かして活躍していきたいなっていう思いがどんどん強くなっていきました。これから現場で色々なことを見て、勉強して、将来は皆が働きがいと誇りを持って仕事ができるような施策に携わりたいです。 最近だと、トワイライトエクスプレス瑞風や大阪環状線改造プロジェクトが、僕の思い描くものに近いと思います。そして30年経ったら、総合職の同期たちと同じ場所で会社のブランドイメージを作れるような、それを実際に実現できる人間になりたいなというのが長期的な目標です。まずその一歩というと少し違うのかもしれませんが、大阪環状線でこれまでにない臨時列 車を現場主導で企画して、走らせてみようというのが目の前の目標です。
炭田:今、地域おこし協力隊として、まちづくりや、観光地としての取り組みに携わっているので、観光学部で学んだ「仕掛ける」ことを町の仕組みづくりに活かしたいと思います。初めて弟子屈に行った時に町への思いを熱く語ってくれる方がいて、そういう方々と一緒に仕事がしたいと思って、暮らし始めたので、自分たちが好きなものが無くならないように、一緒に携わりながら守っていければいいなと思っています。
楠山:これからも金融という仕事を通して、時代に沿 った地方銀行の役割を追求していきたいと思っているのですが、最近はマイナス金利なんかもあって、なかなか銀行業務がしにくくなってきているのも事実です。そのなかで、地方銀行ということで、地方の皆様とか、和歌山の皆様にご協力いただいて、私らもサービス提供させていただいているところがあると思うので、紀陽銀行のCMでも流れていると思うんですけど、「銀行を超える銀行へ」「そこまでやるか」って言ってもらえ る銀行員を目指して、大学で学んだことを活かして頑張りたいなと思います。大事な分野だと思っています。
西川:私は今、客室乗務員として働いているんですけれども、正直やはり、華やかな世界に見えて、精神的 にも体力的にもきついっていうのが正直な感想です。長く務められる仕事ではないと自分でも思っているので、ある程度の時期が来ましたら、やはり結婚して、子供を産んで、その子供を和歌山大学観光学部に入学させて、世界的にも活躍できる人間に育てていきたい なって思います。そのためにも自分が日々成長していかなければいけないと思っているので、色んな資格を持って、それを次の方にお伝えできるように、なにかマナー教室であったり、そういう仕事が出来るような人になっていきたいなって思っています。
納村:今の職場における目標は、子供から年配の方、海外の方など、みんなに満足していただけるようなサービスをして、「このお姉さんの印象良かったな」って言われるような人でありたいと思います。あと、これは上司の影響なのですが、観光は世界平和に貢献する平和産業だと思っています。観光を通じて「この土地が良かったからこの国が好き」とか、「この人が良かっ たからこの場所が好き」っていう風になっていくと思うんですね。今、テロの脅威とか世界情勢の悪化がみられるなかで……そのなかでも、特技の英語と中国語と韓国語を駆使しつつ、日本のお客様には日本の良さ を再発見してもらい、海外のお客様には日本のことを好きになって帰ってもらえるような、そんなお手伝いができたらいいなって思います。そう、世界平和が夢です!
学部長:平和であって初めて観光が成り立つというのが基本だと思うんですよね。次の世代の子どもたちに学ぶ環境を提供する意味でも、人々が自由に学べる平和な社会でないと駄目ですし、我々もそういう社会を作っていけるような学生たち、皆さんの後輩たちを育てていきたいなと、今日はつくづく思うことが出来ました。皆さんの思いをしっかり受け止めるいい機会になりました。一応これで、この座談会を終了したいと思います。本日はどうもありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
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コラム:10周年によせて
もう10年になるのか!というのが実感です。暗中模索の1期生から先輩の背中を追いかける在校生と様々な学生諸君と切磋琢磨してきました。観光分野が国家戦略(ソフトパワー)として重要視されている昨今です。その中、国立大学初の観光学部として教員?学生一体となって走り続けてきた10年であったと思います。 新たな10年は国際関係も協調?対立等新たな時代に入り観光政策が政治?経済?通商に大きく影響を与える時代です。まさに「観光とは何か」をじっくり学び、考え、実践する時期だと思います。その10年は卒業生も社会的に影響力を持つポストに就き活躍が期待される時期でもあります。観光学部で学んだ幅広い知識は一般教養です。その知識を駆使して新たな時代を安心安全な日本を作るため、素晴らしい人生が送れる日本のために頑張ってもらいたいと思っています。また学生諸君は大志をもって大きく羽ばたくツールとしての観光を学んでください。
和歌山大学客員教授(観光学部) 青木 義英
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座談会を振り返って(学部長)
今回の座談会で多くの卒業生が指摘したのは、「教員との距離の近さ」と「幅広い領域の学修」、そして「地域の中での学修」である。教員との近さについては、1学年70人で始まった1期生だけでなく、110人になった2期生以降の卒業生もコメントしており、本学部の特徴である少人数教育の効果を実感していたことがわかる。また、「幅広い領域の学修」については、それぞれの卒業生の幅広い業種の現場で役立っていることがわかる。さらに、地域インターンシップをはじめとする「地域の中での学修」は、コミュニケーション力の向上や視点の転換に役立っていることがわかる。以上のように学部の10年間の教育の方向性が正しかったことがこの座談会を通じて明らかになった。
なお、卒業生は卒業後も学部や教員とのつながりを持ち続けており、必要に応じて教員を活用するなど仕事に役立てている。さらに、何か新しい課題を解決する際に、この幅広い学びで出会った教科書や人が緒になると期待しており、今後も同窓会を通じて、卒業生たちとの交流を一層活性化したい。
※出席者等の肩書きはすべて当時