研究グループ名 | NSC | |
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指導教員名 | 伊藤 昌文 助教授 | |
所属 | 学生 | 構成員名 |
システム工学部 | 60052057 | 森田 高成 |
60052044 | 仁井 嘉之 | |
60052049 | 藤田 孝昭 | |
60052058 | 安田 明人 |
研究の目的?背景
近年、自動車社会においてヒューマントラブルによる交通事故の多発、運転技術の複雑化などが問題となっている。それらを解決する手段として人間では対処しきれない部分を自動化する自動追尾システムを提案する。運転が自動化すれば事故の軽減及び運転技術の簡易化につながると考えられる。その自動追尾システムの基礎的な実験として光センサと超音波センサを用いて、前方の対象物体を自動で追尾するシステムを製作することに取り組んだ。
研究方法
動作プロセス
対象物体との距離、および傾斜角を超音波距離計により計測する。計測値のデジタル信号をマイクロコンピュータ?H8 3048F(以後H8)へ送信する。H8へ送られた値によって速度および進行方向を計算し、それぞれ駆動モータ(後輪)の速度、サーボモータ(前輪)の進行方向を制御した。
距離?傾斜角の計測と計算
動作の簡易図を図1に示す。今回制御は回路でなくマイクロコンピュータを用いておこなった。特にH8 3048Fは言語が比較的容易なCであることとPWMポート、A/D変換ポートを持ち合わせているという利点があるためこれを使用した。
図に示すように2つの超音波センサを用い、それぞれが独立して対象物体との距離を計測し計測した値をH8に送っている。ここで信号の同期が問題になるが送信の間隔が1ms/回、最大の信号のずれが1msにより制御遅れが最大2msになる。それに対して、速度および傾斜角の変化は非常に緩やかにしてあるので今回の実験では問題視しなかった。尚、H8の処理速度は内部クロックが16MHz、言い換えれば最大62.5nsの動作速度であるので充分処理可能であると考えられる。
図1 追尾装置の動作図
- 計算方法
- 速度:、傾斜角:
- ここでv=制御速度、θ=制御角、a=超音波センサAの距離信号、b=超音波センサBの距離信号とする。
制御
速度、角度を左右するモータは信号のパルスによる速度制御(PWM制御)がH8では容易にできるためこの制御方法を用いた。
- デューティー比による制御
- PWM制御は簡単に言えばonとoffの信号の幅によって制御する方法である。onの信号が継続的に送られればモータは回ったままであり、offの信号が継続的に送られればモータは停止したままであるのでonとoffの信号を合わせて一定の幅と考え、それぞれの比率を変えることによって速度が制御可能である。簡易図を以下に示す。
図2 デューティー比簡略図
図3 PWMと関数の関係
- 実際にデューティー比を用いて実験を試みたところ、全くといっていいほど制御が不可能であった。理由としては使用したモータがレース用であったため信号を切り替えても切り替えが高速であるため速度が落ちないことが考えられる。よって次に述べるサーボモータでも使用した方法で制御した。
- 立下りを軸としたPWM制御
- 20msの周期で1msから2ms幅のパルス信号を加えると、サーボはパルス幅に見合った角度で左右に首を振る。同じ要領で駆動モータも正回転、逆回転する。サーボは比較的容易に角度を指定できたが、駆動は停止と希望速度の間隔が非常に小さかったため満足のいく制御が困難であったがある程度は可能であったため両方に採用した。以下にサーボ、駆動の制御図を示す。
図4 サーボモータの制御図
図5 駆動モータの制御図
製作
- 手順は以下の順序である。
- 元となる追尾システムそのものにあたる車体には、TAMIYAのラジコンを使用することにした。H8や駆動回路などをいろいろ載せるためには、それ相応の大きさが必要であると考え、三菱ランサーエボリューション?モンテカルロ仕様に決め、これを組みたてることから取りかかった。
- 超音波センサの製作に取りかかった。超音波センサは市販されている「超音波デジタル距離計キット」を利用した。合計2つ製作した。
- PWMの信号を受け取る駆動回路の製作に取りかかった。
- 光センサは、発光にレーザーポインタ、受光にPSDを用いることにした。またPSDの受光面にレーザーポインタの光を集光するために両凸レンズを用いた。自然光などによる外乱を防ぐためにフィルタを使用するかどうか考えたが、製作段階ではそれほど外乱の影響は少ないと考え、外乱が多大に影響するようであれば利用しようと考えた。レンズの固定にはレンズを挟むような感じでアクリルを使用し、4角をねじでとめるという形をとった。
- レーザーポインタと対称物、及びPSDで三角測量を用いて距離の検出を行った。
- 概略図は図6のようなものである。目標制御距離とPSDの位置幅がうまく適合するようにレンズ、PSDの配置を決定した。
- マイコンボードからの配線、車体に乗せる回路の配置、また回路諸々の電源電圧をどのように配置するかを最終的に決定し、これを製作の最終段階とした。
結果
超音波距離計はほとんどお互いに干渉することなく独立して距離が計測しており、プログラムによる計算によって制御した信号による追尾速度や進行方向もある程度満足できる動作をしていた。実際に走らせてみたが対象を追いかけ接近すると停止していた。
考察
- 駆動モータがレース用であったため制御が困難であったためデューティー比による制御が可能な回転速度の遅いモータを採用すべきであった。
- 外観がとても大雑把であったのである程度実用に近い形にするべきである。
- 光センサの動作がほとんど確認できなかったため精度を上げ、割り込み処理も修正する必要がある。
- 前輪の限界角を考慮して軌道を計算し曲がる最適なタイミングを探してやる必要がある。
- 実験では対象物は目の前のものという至極単純な判断基準であったため、目的の対象を追える工夫をしてやる。
- 赤信号などの強制割り込み処理を追加する。
- アクシデントによる強制終了処理を追加する。
等々が挙げられる。
研究発表(これまで、参加した行事?コンクール?講演会?論文など)
第5回クリエ?学生自主演習コンクール