研究グループ名 | ごっきー |
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所属 | 和歌山大学システム工学部 光メカトロニクス学科 |
構成員名 | 渡辺友紀郎 |
藤本 浩之 | |
西村 雄貴 | |
近谷 厚生 | |
指導教員 | 丸 典明 |
研究の目的?背景
マイコンを使って何か製作してみたいと思い、マイコンを用いればサーボモータを容易に操作できるということから歩行ロボットを製作しようと考えた。その際2足歩行、4足歩行ではモータ制御の際のバランスが難しいことから、比較的安定している6足歩行ロボットを製作することにした。
研究方法?結果?考察
設計?製作について
製作したロボットは、H8マイコン(秋月電子通商/AKI-H8 3048F)、サーボモータ(KO-PROPO PDS-2144FET)、PSD距離センサ(共立エレショップ/ワンダーキット)、アクリル板(本体、および足)で構成される。
設計においては、サーボモータの大きさ、足の配置、および歩行時の足の運びを考慮し、サーボモータをどのように使用するかを考えた。6足歩行であることから3足ずつ同じ動きをさせればバランスは比較的安定している。各足には、足の上下運動用と前後運動用にそれぞれ2個ずつ計12個のサーボモータを用いた。サーボモータはブラッケットに取り付けてあるので、サーボモータの回転および位置制御をそのまま足の上下および前後運動に用いることができた
製作にあたり、まず考慮しなければいけなかったのは、サーボモータが総重量に耐えられるかどうかであった。サーボモータの出力トルクは13Kg/cmであり、サーボモータの中では比較的強いトルクがあるが、実際は最初の設計のままでは耐え切れなかった。
そこで、足や本体の製作にはアクリル板(3mm厚)を用いて軽量化を図った。我が校の実験室にはレーザーカッターがあり、アクリル板であれば切り抜きなどの加工が簡単である。また、アクリル板は熱により思った形に折り曲げることができ、接合部を減らすこともでき、軽量かつ頑丈な足を作ることができた。さらに、地面と接する部分にはアクリル板そのままであると摩擦が少なすぎると考えられたので、スポンジを加工し装着することにより問題を解決した。
制御について
本研究では各足2個ずつ計12個のサーボモータをマイコン(AKI-H8 3048F)を用いて制御した。
ラジコン用のサーボモータの制御にはPWM制御が用いられている。そこで、マイコンから出力されるPWM信号(パルス幅)によって、サーボモータの位置角度を制御する方法を採用した。これによって、プログラム上で数値を指定するだけで思い通りの角度に動かせる。
用いたサーボモータは、1.5ms幅のパルスを出力するとほぼ中間位置で停止し、1.5mS幅を中心として約0.5mSだけパルス幅を増減させることによって、連続的に回転角度を制御することができる。また、実験したところ、0.775~2.225mSの範囲で約180°の範囲で回転運動をした。またこの範囲外のパルス幅を送り込むと無反応だった。
今回使用したマイコンは、基本機能では5つのタイマーを用いることでPWM信号は5つ出力できる。しかしモータの回転する時間を考え、待ち時間の設定にタイマーを1つ使用するため実質4種類のPWM信号しか作ることができない。ところが今回は、各足2個ずつ計12個のサーボモータがあるので、これではそれぞれを独立して制御することができない。基本機能を超えた数をPWM制御するには、タイマー割り込みと言う方法を応用してPWM信号を生成した。これにより、全てのサーボモータをそれぞれ独立して制御することができた。
次に、ロボットの歩行時における各足の動作パターンであるが、常に3本の足が接地していればバランスは安定しているので、比較的楽に歩行パターンを考案できた。
基本的な歩かせ方
- A組の足が蹴り出している間にB組の足を前に移動
- 接地している足の組と、していない足の組を切り替える
- B組の足が蹴り出している間にA組の足を前に移動
- 接地している足の組と、していない組を切り替える
以下に直進運動と回転運動の歩行モデルを示す。
最後に、前方にPSD距離センサを搭載し、障害物を検知している間だけ回転運動をさせ、障害物がなくなれば直進運動に戻るような障害物回避プログラムを作成した。簡単な自立型の歩行ロボットの完成である。さらに様々なセンサを取り付ければ、完全自立型のロボットも実現できそうである。具体的には迷路などを人の補助なしに走破できるだろう。
結果と考察
- スイッチを2種類設定し、1つを待機用、もう1つを歩行開始用に用い、モード切り替えができた。
- PSD距離センサの前方70cmくらいの位置で障害物を検知し回転運動に移り、障害物がなくなると直進運動に戻った。
- PSD距離センサキット本体が検出処理を行いディジタル信号で出力するので、A/D変換処理を行う必要性がなく、マイコン本体には処理による負荷をほとんどかけることなく動作させることができた。
- 現在採用している割り込み処理のプログラム方法では、処理が重たく、また、if文同士の干渉などの問題が残っていて、スムーズな歩行ができていない。switch文等を用いて行動パターンをうまく区別する必要がある。また割り込み処理ももっと簡単なプログラムで行えると考えられる。
- サーボモータの電流供給不足と、設計時からの接地面の角度変更などにより、足がすべってしまったり、力が抜けてしまったりすることがある。最も簡単な対応策としては高容量のACアダプタに取り替えることである。アンプを用いた回路を製作し電流を増幅する方法もある。
- 歩行スピードはそれほど速くなく、人の歩く速さに比べると程遠いスピードであった。サーボモータのパワー不足を補い自重に耐えるようにすれば、もっとスムーズな歩行をさせることも可能になる。
研究発表
平成15年3月8日 和歌山大学自主創造科学センター主催
第5回学生自主研究コンクール 入賞「歩きま賞」