卒業生?修了生へ:学部長メッセージ
公開日 2021年03月25日
和歌山大学観光学部長 尾久土正己
和歌山大学観光学部を本日卒業され観光学の学士号を授与された皆さん、観光学研究科博士課程を修了され、観光学の修士号、博士号を授与された皆さん、おめでとうございます。特に、今年度は過去最高の6人の観光学の博士が誕生したことをうれしく思っています。
皆さんが入学された4年前(大学院研究科だと2年とか3年前)、我が国は、いや、世界中が急速に発展する観光産業やその関連分野に熱い視線を送っていました。卒業される皆さんの中にも、観光産業の花形の1つである航空会社への就職を希望されていた方もいらっしゃたと聞いています。しかし、直前までまったく想定していなかったコロナウイルスのパンデミックによって世界の姿、価値観は大きく変わってしまい、観光産業は大きな打撃を受けてしまいました。
しかし、冷静に考えてみると、人々が観光をしたいという想いは、好奇心のようなものでこのまま消えてしまうはずがなく、各種調査でもパンデミックが終わったあとには、多くの人々が観光をしたいと答えています。また、産業構造やその中での働き方については、ゆっくり進んでいたデジタルトランスフォーメーション(いわゆるDX)やSDGs、カーボンニュートラルという持続可能な社会への転換の中で、少しずつ新しいカタチに移行中でした。それが、パンデミックで10年分くらい一気に進んだと考えた方が良いと思います。22歳で卒業される皆さんを例に取れば、2030年代、つまり30代のころに徐々に来るはずだった社会のカタチがパンデミックに押されて一気にコマを進めたのです。
もちろん、楽しい、そして有意義な学生生活の最後の1年を自粛の中で自由に過ごせなかった不満はあるでしょう。特に希望していた職種につけなかった方には悔しさもあるでしょう。しかし、今回は世界中の皆が、一緒にその不満を共有できたことが未来に向けて、大きな希望につながるかと期待しています。思い描いていた職業につけなかった人も、また希望した仕事につけた人も、実際に仕事が始まれば、同じスタートに立っていると私は考えています。自分の好きなことを仕事にすることが、世間では素晴らしいことのように言われていますが、私が思うには、今取りんでいる目の前の仕事に、やりがいや面白さを見つけることの方がより素晴らしいことだと考えています。
幸い、観光学部や観光学研究科で学んだ皆さんは、幅広い専門分野から集まった私たち教員から、それこそ、身近な社会から宇宙まで幅広い世界について学んできたと思います。観光というものは、どんなものでもその対象になります。一見何もないような地域や資源でも、そこに魅力を見つけ出し、感動を創造していくのが観光であり、それを学問にしたのが観光学です。ですから、観光学を学んだ皆さんは、どんな仕事、どんな環境にあっても、ぜひ、そこに魅力を見出し、皆さん自身が日々、非日常を求めて旅する観光客として、人生を楽しんでいただきたいと思います。
コロナウイルスが100年ぶりのパンデミックであったように、今後も首都直下地震や南海地震、あるいは国際間の紛争など、想定外の困難に出会うことでしょう。そのときに、常に観光学の観点から、その瞬間を客観的に観察し、より良い生き方を選んでください。卒業証書を受け取った皆さんには、その能力があると信じています。そうは言っても、もし、人生に迷ってしまったときは、遠慮なしに大学に帰ってきてください。大学というところは、わからないことを考えるところです。大学院は何歳になっても学ぶことができます。私も27歳に修士課程に、39歳のときに博士課程で学びなおした結果、今があります。もちろん、大学院入学という大げさなことでなくても、気楽にこの木造の学び舎を訪ねてきてください。皆さんのふるさとの1つがここにあります。
私たち教員も皆さんと同じだけ年を取りますので、私のような年寄は、数年後にはいなくなりますが、観光学部に入ってくる先生たちは、いつの時代も、和歌山大学観光学部の卒業生とともにあることは、今の学部長である私が断言したいと思います。皆さんの、まずは健康と、活躍を祈念しまして、お祝いの挨拶にします。
本日は、卒業、そして修了おめでとうございます。
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2021年3月25日
和歌山大学観光学部長 尾久土正己