終了【10/19(水)】第86回 数学に現れる無限の扱い方
公開日 2016年09月27日
日時 : 2016年10月19日(水) 午後7時~8時半
話題提供: 片山 聡一郎 ?氏 (大阪大学大学院理学研究科教授?前 岸和田サテライト副サテライト長)
場所 : 岸和田市立浪切ホール 1階 多目的ホール
※参加無料?申込不要
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「可能性は無限大」などの表現で私たちは日常でも「無限大」という言葉を使うことがあります。
「無限大」の言葉の意味は「限り無く大きいこと」ですが、普段の生活で使うときには「非常に大きいこと」程度の意味で、真の意味の「無限大」ではないことが多いように思います。
でも、数学の世界では真の意味での「無限」に出くわすことは珍しくありません。例えば「素数が無限個」というときの「無限個」は「非常に多い個数」ではなく、本当の意味での「限り無い個数」です。
今回は、数学で扱われる「無限」に関係した概念のいくつかを紹介したいと思います。前半では個数における「無限」の扱いについて、後半では微分積分に現れる「無限」の扱いについて歴史的な変遷も含めてお話ししたいと思います。
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開催レポート?
?参加者62名
解析学研究の専門家である片山教授のお話に会場のみなさんは引き込まれ、途中紹介された「1=0.999999??????」という式に驚いた方も多かったようです。講演の概要を参加者のお一人にレポートしていただきました。
■現代数学における「無限大」という概念の扱いについて
無限大には、「可算無限」と「非可算無限」の二種類が存在します。可算無限とは、簡単に言えば、「自然数と1対1に対応づけられる」ということであり、非可算無限とは、可算無限より更に「多い」ということです。
講演では、直観的には自然数全体より「多い」と思われる整数全体や有理数全体の集合あるいは自然数全体より「少ない」と思われる偶数全体や奇数全体の集合が、実は自然数と同じ可算無限であるということが、証明の簡潔な説明と共に紹介されました。また、実数全体の集合が非可算無限であることが「カントールの対角線論法」の説明と共に紹介されました。
■微分積分学における「無限大」の扱いについて
主に現代の微分積分学における数学史のお話でした。最初に、微分が曲線上のある点における接線の傾きあるいは瞬間的速度として捉えることができ、積分は曲線と直線の間の面積を求める操作と捉えることができること、さらに両者は「微分積分学の基本定理」で結び付けられるという高校数学の内容を復習しました。
微分積分学の創始者はニュートンやライプニッツですが、特にライプニッツは「無限小の数」という概念を用いて微分積分学の理論を展開していきました。この「無限小の数」は、多くの数学者から厳密性に欠けるとして批判されましたが、その後に「極限」という概念が扱われ、微分積分学の考え方にも変化が生じてきました。そして最終的には、ワイエルシュトラスが提唱した「ε-δ(イプシロン?デルタ)論法」により、微分積分学が厳密に議論できるようになりました。
こうして微分積分学はε-δ論法を基に議論されるようになり、ライプニッツの直観的な「無限小の数」は、しばらく忘れられるようになりました。しかし20世紀に入り、ロビンソンが提唱した超準解析により「無限小の数」という考え方が再び登場することになります。この超準解析は、既に得られた微分積分学の結果と矛盾せず、理論の正当性が保証されていることが紹介されました。(参加者 神谷聡志さん)
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-参加者アンケートより-
?難題でしたが、興味深く聴かせていただきました。(50代男性)
?自然数、整数、有理数、無理数、実数の定義を忘れていたのを思い出させてもらってよかった。(60代男性)
?昔好きだった数の世界へ戻れるように思いました。(40代女性)
?とてもわかりやすかったです。微分積分にもう少し積極的に向き合えそうな気がします。(10代女性)
?もう少し時間をとってじっくり聞きたかった。超準解析が少し出てきたのはよかった。岸和田でこういう話が聞けるとは素晴らしい。(40代男性)
?普段は接することのできない数学の考え方の一部を多くの人と興味深く聴けてよかった。(20代男性)
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